出産にかかる費用と10つの公的補助を徹底解説【決定版】

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子供ができるということは非常に嬉しいことですが、出産や育児にかかる費用について不安を感じている方はたくさんいらっしゃると思います。

そこで今回はまず、出産に関する費用について、徹底調査してまとめてみたいと思います。

妊娠や出産の費用については基本的には健康保険がきかないため、その費用をどう賄うかが課題になりますが、公的な補助が妊娠・出産に対しても多く存在していますので、これらを上手く活用することで、自己負担額を大きく抑えることができます。今回はそのような公的補助についてもご紹介したいと思います。

現在、妊娠中の方やこれから出産を考えている方は今回の記事を読んで、しっかり備えていただければと思います。

目次

1.出産にかかる費用の相場について

  • 1−1.出産にかかる費用の種類
  • 1−2.妊婦健診にかかる費用の相場
  • 1−3.マタニティ用品(出産準備用品)にかかる費用の相場
  • 1−4.出産費用の相場

2.出産にかかる費用についての注意点

  • 2−1.出産費用は健康保険が適用されない
  • 2−2.妊婦健診も健康保健が適用されない
  • 2−3.分娩予約金がかかる場合がある
  • 2−4.出産する病院によって出産費用は変わる
  • 2−5.医療保険に加入する場合は、妊娠前に加入しましょう

3.出産費用に関わる公的補助

  • 3−1.出産育児一時金
  • 3−2.出産育児一時金直接支払制度
  • 3−3.出産費貸付制度
  • 3−4.出産手当金
  • 3−5.高額療養費制度
  • 3−6.医療費控除
  • 3−7.傷病手当金
  • 3−8.失業給付金
  • 3−9.所得税還付金
  • 3−10.各自治体の助成金

4.まとめ

1.出産にかかる費用の相場について

出産にかかる費用は50〜100万程度と言われていますが、どのような費用がどのくらいかかるのでしょうか?費用の種類と金額感をご紹介したいと思います。

1−1.出産にかかる費用の種類

出産にかかる費用は大きく分けると下記の3種類に分かれます。一つ目は「妊婦健診費用」です。妊娠後は定期的に妊婦健診を受けて、妊婦さんの健康状態や胎児に異常はないか等を確認して、どのような分娩方法にすべきか等を検討していきます。二つ目はマタニティウェアなどの「マタニティ用品(出産準備用品)費用」。そして、三つ目は実際の「出産費用」になります。

<出産にかかる費用の種類>

  • 妊婦健診費用
  • マタニティ用品(出産準備用品)費用
  • 出産費用

1−2.妊婦健診にかかる費用の相場

妊婦健診は一回4000〜5000円程度かかり、特殊な検査等をした場合には1万円程度かかる場合があります。妊婦健診は、平均的には13〜15回程受けることになります。そうすると合計金額では、仮に一回の健診費用を5000円とし、14回健診を受けたとすると7万円が合計金額になります。実際にベビータウンが調査したデータによると、下図の通り5〜7.5万円の人が最も多く、次いで7.5〜10万円となっています。

図1:妊婦健診にかかった費用について

妊婦健診にかかった費用について

引用:妊娠・出産・育児にかかるお金の実態(N=2830)|ベビータウン

ただし後程詳細についてはご紹介しますが、多くの自治体では、14回程度分の妊婦健診受診票(無料で妊婦健診を受けることができる受診票)が提供される等の助成制度がありますので、詳細はお住いの自治体に確認してみましょう。

1−3.マタニティ用品(出産準備用品)にかかる費用の相場

マタニティ用品としては、マタニティウェアやマタニティ下着やパジャマ等の衣類や、妊婦用抱き枕、葉酸サプリ、腹帯、妊娠線対策・つわり対策グッズ等も必要に応じて購入することになります。実際にマタニティ用品にかかった費用としては、下図のデータから5万円未満が最も多く、次いで5〜10万円という結果になっています。みなさん、お祝い品やお下がり、レンタル品をうまく活用して、費用を抑えているというのが現状です。

図2:マタニティ用品(出産準備用品)にかかった金額について

マタニティ用品(出産準備用品)にかかった金額について

引用:妊娠・出産・育児にかかるお金の実態(N=2830)|ベビータウン

1−4.出産費用の相場

出産費用は、出産場所、出産環境オプション、出産・分娩方法によって金額感が変わってきます。下図のデータによると、30〜40万円未満かかった方が最も多く、40〜50万円が次いで多いという状況で、40万円前後が平均値となります。

出産場所としては、「総合病院、産婦人科病院、大学病院、個人産院・クリニック、助産院」等があり、出産環境オプションとしては「個室、トイレシャワー付き、食事内容、その他サービス」等で金額が変わってきます。最近は大部屋ではなく、個室を望む方が多いですが、個室にした場合は「数千円~/日」の追加料金がかかります。

出産・分娩方法としては「自然分娩、帝王切開、合併症や切迫早産、無痛分娩」等によって費用が変わってきます。自然分娩はおおよそ40〜75万円程度になる傾向にありますが、健康保険がききません。帝王切開の場合はおおよそ50〜75万円程度ですが、健康保険がきくため自然分娩と大きく費用の差はないようです。妊婦が合併症を伴う場合や切迫早産の場合は60〜85万円程度の費用がかかる傾向にあるようです。ただし、この場合も健康保険がききます。もしも帝王切開や切迫早産で入院や通院で高額な医療費が予想される場合には、高額療養費制度を活用して費用を抑えましょう。高額療養費制度については別記事「高額療養費制度を徹底解説!医療費はここまで抑えられる」で詳細を書いていますので、読んでみてください。また、無痛分娩の場合には、自然分娩の費用に加えプラスアルファの金額がかかるケースが多いです。プラスアルファされる金額の相場としては約1〜20万円と医療機関によって幅があるようです。

図3:出産費用にかかった金額について

出産費用にかかった金額について

引用:妊娠・出産・育児にかかるお金の実態(N=2830)|ベビータウン

2.出産にかかる費用についての注意点

ここまで出産に関わる費用についての相場を書いてきましたが、ここからは出産にかかわる費用についての注意点についてご紹介したいと思います。

2−1.出産費用は健康保険が適用されない

前述の通り、医学的な必要性から帝王切開した場合や合併症や切迫早産の場合には、健康保険の3割負担が適用されますが、自然分娩では全額が自己負担になります。

2−2.妊婦健診も健康保健が適用されない

出産費用のみではなく、妊婦健診費用についても健康保健が効きません。ただし、後程紹介する通り各自治体の助成制度により、母子手帳と一緒に妊婦健診の補助券や無料券を発行する自治体が増えています。

2−3.分娩予約金がかかる場合がある

出産には多くのお金がかかるため、最近では分娩予約金を取っている医療機関が増えています。大体5万〜20万円が予約金の相場になるようです。

2−4.出産する病院によって出産費用は変わる

出産する病院によって出産費用が変わるという点は前述の通りですが、大学病院では35万円前後、総合病院では40万円前後、個人病院では40〜100万円程度(設備による)のようです。また一般的に市民病院や助産院は比較的安く出産できる傾向にあるようです。

2−5.医療保険に加入する場合は、妊娠前に加入しましょう

早産や帝王切開等で入院や手術をした場合、加入している医療保険によっては給付金が出ます。ただし、妊婦判明後に新規で医療保険に入ろうとすると、妊娠・出産などの保障が制限される場合もありますので、医療保険の加入は妊娠前に検討するようにしましょう。

具体的には、妊娠27週までは、大半の妊婦は医療保険に加入することは可能ですが、「部位不担保」という形での加入になります。部「位不担保」というのは、ある特定の体の部分、指定の疾病については、保障の対象外になるものです。例えば以下のようなものが「異常妊娠、異常分娩」ということで不担保となります。

<妊娠後に医療保険に加入した際に部位不担保となるもの>

  • 帝王切開
  • 切迫早産
  • 切迫流産
  • 子宮頸管無力症
  • 吸引分娩
  • 早期破水
  • 子宮外妊娠
  • 前置胎盤
  • 妊娠中毒症
  • 死産 等

3.出産費用に関わる公的補助

ここまで出産にかかる費用感について、まとめてきましたがいかがでしょうか?「こんなにかかるの?知らなかった!」という方がが多いと思います。しかも、基本的には健康保健がきかないということも初耳の方が多いと思います。でもご安心ください。健康保険はききませんが、出産費用に関わる公的補助がありますので、そちらをこれからご紹介していきたいと思います。それらの公的補助を上手く活用すれば、出産費用はかなり少額に抑えることも可能です。

3−1.出産育児一時金

まずは出産費用に関わる最も代表的な公的補助である「出産育児一時金」についてご紹介したいと思います。この公的補助は、子供1人出産するごとに42万円(加入している健康保険によっては上乗せがある場合があります。)がもらえるというものです。健康保険、国民健康保険から支給される制度になります。

ただし、在胎週数が22週に達していない出産や産科医療補償制度のある病院や医療機関で出産しない場合には、一児につき39万円と金額が変わりますので、事前に出産する医療機関に確認してみましょう。また、海外で出産した場合も一児につき39万円となります。(万が一、流産や死産等で出産に至らなかった場合でも妊娠4ヶ月以上であれば、支給されます。)

3−2.出産育児一時金直接支払制度

出産育児一時金は出産後にもらえるお金なので、一時的に立て替えるお金がない場合には、「出産育児一時金直接支払制度」という制度を利用することで問題が解決します。平成21年10月から開始された制度で、出産育児一時金が、病院に直接支払われる制度になります。出産育児一時金以上の費用が発生した場合でも、その差額を支払えば良いので、経済的な負担を抑えることができます。出産予定日の1ヶ月前から申請することができますが、この制度を受け入れていない医療機関もあるため、事前に確認が必要になります。

小規模な産院や助産院ではこの制度の代わりに、「出産育児一時金受取代理制度」という制度をを導入しているところもあります。直接支払制度と受取代理制度で大きな違いはありませんが、受取代理制度の場合は健康保険組合に事前申請が必要になります。

3−3.出産費貸付制度

「出産費貸付制度」とは、健康保険組合に加入している本人または配偶者が出産時に受け取ることのできる出産育児一時金の9割を無利子で借りることができる制度です。この「出産費貸付制度」では、妊娠4か月以上であれば申請が可能となりますので、分娩予約金などの費用がない場合に有効です。

3−4.出産手当金

「出産手当金」とは健康保険組合に加入している本人が、出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に、産休中の生活をサポートするために支給される手当金となります。原則、標準報酬月額の3分の2が出産日前42日、出産後56日の合計98日間支給されます。対象者は正社員ではないパートやアルバイトでも健康保険に加入し、産休中も健康保険料を払っていれば、この「出産手当金」は受け取ることができます。昔は健康保険を任意継続した方、退職後6ヶ月いないに出産した方も対象になっていましたが、現在では制度が改定され、産休後仕事に復帰する方のみが対象になっています。

3−5.高額療養費制度

妊婦健診や自然分娩による一般的な出産では健康保健が適用されないため、高額療養費制度は活用できませんが、下記のような妊娠中の母体や赤ちゃんにトラブルが発生した時や、出産時に医療処置が必要な場合には健康保健が適用され、高額療養費制度を活用することができます。高額療養費制度の詳細については、別記事「高額療養費制度を徹底解説!医療費はここまで抑えられる」でご紹介していますので、合わせて読んでみてください。

<高額療養費制度が適用される妊娠中の母体や赤ちゃんのトラブル>

  • 切迫流産・流産
  • 切迫早産・早産
  • 重症妊娠悪阻
  • 子宮頸管無力症
  • 妊娠高血圧症候群
  • 前期破水
  • さかごや前置胎盤等の超音波検査
  • 児頭骨盤不均衡 等

<出産時に医療処置が必要な場合>

  • 医学的な判断による帝王切開
  • 微弱陣痛等による陣痛促進薬の使用
  • 止血のための点滴
  • 医学的な判断による無痛分娩の麻酔
  • 赤ちゃんが新生児集中治療室に入る場合
  • 死産 等

※吸引分娩、鉗子分娩も医療機関によっては健康保険の対象になるケースもあります。

ここで、高額療養費制度と出産育児一時金は合わせて利用することができるのか?という疑問をお持ちの方もいると思いますので、例を用いて説明したいと思います。高額療養費制度が適用されるのは医療費部分のみで、分娩費は通常通り自己負担になります。例えば、帝王切開で分娩介助料等の分娩費が30万円、手術料、麻酔料、投薬料等の医療費が40万円かかった場合、分娩費用は除いた医療費のみに健康保健が適用されますので、医療費40万円に高額療養費制度が適用されます。そうすると、標準報酬月額が28〜50万円の方であれば、医療費部分が高額療養費制度により81430円になります。よって、出産育児一時金が42万円支給されるとすると、下記の通り38570円がプラスになるという計算になります。

図4:帝王切開時の自己負担額の例

帝王切開時の自己負担額の例

3−6.医療費控除

妊婦健診や分娩費については健康保健が適用されませんが、「医療費控除」の対象にはなります。「医療費控除」とは、所得控除の一つで、医療費を多く払った人(年内10万円超)は確定申告すると払いすぎた税金が戻ってくるというものです。所得控除って何という方は別記事「知らずに損してない?サラリーマン必読の節税対策【決定版】」で所得控除や医療費控除についてご紹介していますので、合わせて読んでみてください。具体的に医療費控除の対象になる出産関連費用は下記になります。

<医療費控除の対象となる出産関連費用>

  • 妊娠と判断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用
  • 出産で入院するときにタクシーを利用した場合のタクシー費用(里帰り出産の起床費用は対象外)
  • 出産時の分娩介助料、手術料、投薬料、麻酔料、入院日等(自分都合による差額ベット代は対象外)
  • 入院時の食事代(自分都合による外食等は対象外)
  • 病院が用意したシーツや枕カバー等のクリーニング代(パジャマ等の身の回りのクリーニング代は対象外)

3−7.傷病手当金

「傷病手当金」とは、健康保険から支給される手当で、被保険者本人が病気や怪我のために会社を連続する3日間を含み4日以上休み、給料が受け取れない場合に支給されるものです。妊娠、出産時においては、切迫早産や妊娠悪阻等によって入院や自宅療養をした際に傷病手当金の対象となります。支給額は、標準報酬月額の3分の2相当にあたる額が支給されます。注意点としましては、産休中の場合は出産手当金が優先ですので、傷病手当金をさらに支給してもらうことはできません。

3−8.失業給付金

失業給付金とは、会社勤めの方が失業した場合に、雇用保険より支給される給付金になります。出産を機に退職した場合にも、入っていた雇用保険からこの「失業給付金」が支給されます。

3−9.所得税還付金

出産を機に年度の途中で退職した人は、年末調整を受けていないため、確定申告することで所得税の還付金を受け取ることができます。

3−10.各自治体の助成金

自治体によっては、出産や育児に対して様々な助成金を用意していることがあるので確認しましょう。前述の通り、妊婦健診にかかる費用については、大半の自治体でその費用の一部または全額を助成してくれる制度「妊婦健康診査費用助成」があります。

図5:市区町村別の妊婦健康診査の公費負担回数

市区町村別の妊婦健康診査の公費負担回数

引用:厚生労働省 平成26年4月における全国1741自治体の妊婦健康診査の公費負担状況についての調査結果より

その他にも例えば、東京都港区では、出産助成金として最大60万円が支給されたり、東京都千代田区では、妊娠20週以降、または、産後1年未満の方に45,000円の誕生準備手当が支給されます。子供が生まれる度に出産お祝い金が支給されたり、里帰り出産の助成金や通院用のタクシー券の発行などがある場合もあります。詳細は自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

4.まとめ

今回は出産に関わる費用や公的補助について徹底調査しまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?出産費用は健康保険が通常適用されないため、けっこうな自己負担額になります。しかし、今回の記事でご紹介した10つの公的補助をしっかりと理解し、活用することができれば自己負担額を最小限に抑えることが可能です。現在ご妊娠されている方、またはこれから妊娠を予定されている方は、この記事を参考にお金の心配事をなくして、出産に専念できるように準備してみてください。この記事がそんな方々のお力になれれば嬉しいです。

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