副業で開業届を出す必要はあるの?【徹底解説】

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副業で所得が20万円を超えると確定申告が必要になりますが、開業届を出していると青色申告で節税ができるというような情報を聞いたことがある人もいると思います。

また、副業を行っている人の中には、副業なのに開業届を出す必要はあるのか?会社にばれたくないのに開業届なんて出したら会社に副業のことがばれてしまうのではないか?というような開業届に関して、様々な疑問をお持ちの方も多いと思います。

今回は、そんな副業を行っている人を対象として、開業届とは何なのか?副業でも開業届を提出すべきなのか?開業届を提出するメリット・デメリットは何なのか?等についてまとめましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。

目次

1.そもそも開業届とは何か

2.副業でも開業届は提出する必要性はある?

  • 2−1.本業であれ、副業であれ開業届の提出は必要のようだ
  • 2−2.ただ副業の場合、開業届を提出していない人が多数
  • 2−3.開業届を提出しなければ「雑所得」として申告すれば良い

3.副業で開業届を提出するメリット・デメリット

  • 3−1.副業で開業届を提出するメリット
    • 3−1−1.損益通算が可能になる
    • 3−1−2.赤字を3年間繰り越すことができる
    • 3−1−3.青色申告特別控除(65万円)を受けることができる
    • 3−1−4.専従者給与を経費にすることが可能
    • 3−1−5.事業用部分の費用を必要経費にすることができる
    • 3−1−6.税理士に無料で記帳指導をしてもらえる可能性がある
    • 3−1−7.確定申告書類が一式送られてくる
    • 3−1−8.屋号で銀行口座を作ることが可能
    • 3−1−9.小規模企業共済等に加入することが可能
  • 3−2.開業届を提出するデメリット
    • 3−2−1.開業届の提出等の手続きが必要
    • 3−2−2.必ず確定申告しないといけない(副業での所得が20万円以下でも)
    • 3−2−3.青色申告特別控除を受ける場合、複式簿記にて記帳する必要がある
    • 3−2−4.失業保険をもらうことができない可能性大
  • 3−3.副業で開業届を提出する際のその他注意点
    • 3−3−1.そもそも本業の就業規則違反にならないか
    • 3−3−2.給与所得者の事業申告拒否が有り得ます
    • 3−3−3.専従者給与を払う場合は源泉徴収の義務が生じる
    • 3−3−4.賃貸住宅で開業をしようとしている場合には大家さんに事前に報告しよう

4.開業届を提出するかは副業の月収で判断しよう

5.まとめ

1.そもそも開業届とは何か

まずは、そもそも開業届とは何なのかについてご説明したいと思います。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、各地の税務署で配布しており、国税庁のホームページからもダウンロードすることが可能です。

開業届の提出対象者としては、国税庁のホームページによると下記とされており、事業の開始から1ヶ月以内に提出することになっています。

<開業届の提出対象者>

新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方

引用:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|申告所得税関係|国税庁

2.副業でも開業届は提出する必要性はある?

続いて、副業を行っている人の気になることの一つである「そもそも副業でも開業届を提出する必要があるのか」ということについて解説していきたいと思います。

2−1.本業であれ、副業であれ開業届の提出は必要らしい

副業だから開業届を提出しなくてもOKというわけではなく、本業であれ、副業であれ、事業を開始したら開業届を提出することになっています。

2−2.ただ副業の場合、開業届を提出していない人が多数

しかし、副業を行っている人の中で開業届を提出している人は少ないようで、本業でも開業届を提出していない人が多く存在するようです。多いケースとしては、副業の場合は副業である程度儲けが出てきてから開業届を提出するケースが多いようで、副業を始めて数年が経過した後に開業届を提出したケースもあるようです。

ただ、ここで「えっ?本業でも事業を開始したら開業届」を提出しないといけないんじゃないの?」と思う方が多いと思いますが、実際にいろいろ調べてみると会計士の方も下記のようにコメントをしていて、副業を始めてから必ず1ヶ月以内に開業届を提出しなくてはならないわけではないようです。

1.開業届を提出する基準はあるのでしょうか

売上があがったら提出するものですが、仮に、収入が増えてから開業届を提出するとした場合、おっしゃるとおり、税金が発生する、所得が20万円を超えてからで大丈夫です。年収が20万円ではなく、年収マイナス仕入支出=所得が20万円になったらです。

なお、所得が20万円超える前に提出しても、後に提出しても税金は変わりません。

公認会計士・税理士 西田 恭隆

引用:開業準備・開業届について | 起業Q&A – 起業・会社設立ならドリームゲート

実際に、開業届を提出していなかったからと言って、法で罰せられたという情報は見当たりませんし、罰金や追徴課税が課せられるわけでもないようです。ただし、開業届を提出するかどうかで所得区分が変わるという点がポイントになるようです。

2−3.開業届を提出しなければ「雑所得」として申告すれば良い

上記で引用した通り、国税庁のホームページには、「新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方」が開業届の対象とあります。つまり逆説的に捉えると、事業所得や不動産所得、山林所得が生じなければむしろ開業届は提出できないということにもなります。

実際、副業でも大きな割合を占めるアフィリエイトやネットオークション等のネットビジネスの場合は、「雑所得」に分類されることが大半で(本業を上回る収入の場合は、事業所得としてみなされる場合もある。)、自ら「このネットビジネスから得ている所得は事業所得です」と言って、開業届を提出しない限り、副業の所得は「雑所得」扱いになることがほとんどということです。

雑所得についての詳細は国税庁のホームページを見ていただければと思いますが、簡単にご説明すると「他の所得に当てはまらない、偶発的な収入みたいなもの」という感じです。

つまり、副業を行っている人が開業届を提出するかは自己裁量で自分の副業での所得が「事業所得」なのか「雑所得」なのかを判断し、「事業所得」であれば開業届を提出するということになるでしょう。ただし、各々の所得区分でのメリット・デメリットがありますので、現段階の自分が、開業届を提出するメリットがどれだけあるのか、デメリットはないのかを確認した上で、開業届を提出するかを決めると良いでしょう。

3.副業で開業届を提出するメリット・デメリット

それでは、開業届を提出するメリット・デメリット(事業所得のメリット・デメリット)について説明していきたいと思います。

3−1.副業で開業届を提出するメリット

開業届を提出する主なメリットには下記があります。

<開業届を提出する主なメリット>

  • 損益通算が可能になる
  • 赤字を3年間繰り越すことができる
  • 青色申告特別控除(65万円)を受けることができる
  • 専従者給与を経費にすることが可能
  • 事業用部分の費用を必要経費にすることができる
  • 税理士に無料で記帳指導をしてもらえる可能性がある
  • 確定申告書類が一式送られてくる
  • 屋号で銀行口座を作ることが可能
  • 小規模企業共済等に加入することが可能

3−1−1.損益通算が可能になる

これは、所得税や住民税を計算する際に、他の事業や給与と損益の合算が可能ということです。例えば、副業が赤字(副業収入から副業にかかった経費を引いたら赤字だった)の場合には、本業の給与の所得から副業の赤字部分を引くことができるため、その分、既に本業の給与から引かれた税金が還付されたりします。

3−1−2.赤字を3年間繰り越すことができる

確定申告において「青色申告」を行っている場合には、損金申告用の申込書を確定申告時に提出することで、最大3年間赤字を繰り越して計上することが可能です。

ただし、青色申告にて申請する場合には、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。「所得税の青色申告承認書」の提出期限は、青色申告書によって申告しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以降、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日から2ヶ月以内)となっています。詳細は国税庁のホームページ「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|申告所得税関係|国税庁」をご確認いただければと思います。

3−1−3.青色申告特別控除(65万円)を受けることができる

青色申告かつ複式簿記で記帳している場合には、事前に上記申請をした上で、65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

3−1−4.専従者給与を経費にすることが可能

家族を専従者として給与を払えば、その給与分を経費にすることができます。白色申告の場合は「配偶者の専従者給与は年間で86万円まで」等の制限がありますが、青色申告の専従者給与には制限がありません。こちらも事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があり、「所得税の青色申告承認申請書」と同様に開業から2ヶ月以内または青色申告をする年の3月15日までが提出期限となっています。詳細は国税庁のホームページ「[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続|申告所得税関係|国税庁」をご確認いただければと思います。

ただし、この専従者給与を経費にする場合は注意点があります。それは、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなることです。実際にどちらの場合が節税になるかをシミュレーションした上で、判断すると良いでしょう。

3−1−5.事業用部分の費用を必要経費にすることができる

開業届を提出していなくても、経費はある程度認められますが、「私用」と「事業用」のどちらでも使っているものを経費として計上することは難しいと考えたほうが良いです。開業届を提出している場合には、事業用での費用はもちろんのこと、「私用」と「事業用」どちらでも使用しているものについては、使用時間の割合や使用面積の割合等の按分率から事業用部分の費用については必要経費にすることができます。

この按分率の話や副業の必要経費については、別記事「副業の必要経費について徹底調査してまとめました【決定版】」にまとめていますので、こちらもぜひ読んでみてください。

副業の必要経費について徹底調査してまとめました【決定版】

3−1−6.税理士に無料で記帳指導をしてもらえる可能性がある

開業届を提出すると税理士や税務署の職員を講師とした勉強会や無料相談会の案内が届くようになります。そのほかにも自宅や事業所に個別に税理士が訪問して記帳指導してくれる無料サービスも受けることが可能なようです。多くの方が自ら本を買って勉強したりしていることを考えると無料でプロにいろいろ相談・確認できるのは、とても心強いメリットと言えるでしょう。

3−1−7.確定申告書類が一式送られてくる

開業届を提出すると、毎年税務署から確定申告書類一式が送られてくるようになります。書類自体は国税庁のホームページからダウンロードできるのですが、そろそろ確定申告してくださいねとアラートをあげてもらえるだけでもある程度のメリットと言えるでしょう。

3−1−8.屋号で銀行口座を作ることが可能

開業届を提出すると、屋号で銀行口座を開設することができます。確定申告が必要になってくると銀行口座やクレジットカードを「私用」と「事業用」に分ける必要性が出てきますが、開業届を提出していれば、屋号で事業用の口座を開設できるため便利です。

3−1−9.小規模企業共済等に加入することが可能

開業届を提出することで、小規模企業共済等に加入することができる点も一つのメリットかと思います。小規模企業共済とは、個人事業主や会社役員のための退職金制度のようなもので、毎月共済金を積み立てて、退職や事業をやめた際に受け取ることができるものです。しかもこの共済金が経費として扱うことができるというのが最大のポイントになります。貯蓄しつつ、節税効果もあるものなので、開業届を提出したらぜひ加入を検討してみた方が良いでしょう。

3−2.開業届を提出するデメリット

開業届を提出する主なデメリットには下記があります。

<開業届を提出する主なデメリット>

  • 開業届の提出等の手続きが必要
  • 必ず確定申告しないといけない(副業での所得が20万円以下でも)
  • 青色申告控除を受ける場合、複式簿記にて記帳する必要がある
  • 失業保険をもらうことができない可能性大

3−2−1.開業届の提出等の手続きが必要

そもそも開業するには、開業届を提出する必要があるため手間がかかります。また、青色申告をする場合には「所得税の青色申告承認申請書」、青色専従者に給与を払う場合には「青色事業専従者給与に関する届出書」等、その他諸々書類等による手続きも増えるため、開業するにあたっては、そのような書類作成の手間がかかることは覚悟を決めておきましょう。

3−2−2.必ず確定申告しないといけない(副業での所得が20万円以下でも)

開業届を提出すると廃業届を提出するまでは、必ず毎年、副業による所得が20万円以下であっても確定申告を行う義務が生じます。これを認識できていない人も結構いるため、注意が必要です。

3−2−3.青色申告特別控除を受ける場合、複式簿記にて記帳する必要がある

記帳の方法としては「簡易記帳」と「複式簿記」の2つがありますが、青色申告特別控除(65万円)を受ける場合には、「複式帳簿」にて記帳する必要があります。「複式帳簿」についてはまた別記事にて詳細は書きますが、簿記の知識が必要になり、手間も「簡易記帳」に比べかかるため、その点はデメリットと言えるでしょう。しかし、経理の知識がつくということを考えるとメリットとも言えるかもしれません。

3−2−4.失業保険をもらうことができない可能性大

開業届を提出すると、「雇用保険の基本手当」つまり「失業保険」の受け取り資格がなくなる可能性が高いです。ハローワークの「雇用保険の基本手当」のページには受給要件として下記の記載があります。

ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。

引用:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について

つまり、開業届を提出しているということは、ある種再就職の意思がないと見られ、失業保険の対象外になるケースが多いようです。

3−3.副業で開業届を提出する際のその他注意点

開業届を提出するメリット・デメリットをまとめてきましたが、最後に見落としがちな注意点もまとめておきたいと思います。

<開業届を提出する際のその他注意点>

  • そもそも本業の就業規則違反にならないか
  • 給与所得者の事業申告拒否が有り得ます
  • 専従者給与を払う場合は源泉徴収の義務が生じる
  • 賃貸住宅で開業をしようとしている場合には大家さんに事前に報告しよう

3−3−1.そもそも本業の就業規則違反にならないか

これは本当にそもそも論になりますが、本業の会社の就業規則は、開業届というか副業を開始する前によく確認しておきましょう。就業規則によっては、副業が発覚した時点で懲戒免職ということも有り得ます。別記事「副業の税金(確定申告、会社バレ対策など)【徹底解説】」でも書きましたが、副業が会社にばれない確実な方法はありません。もし就業規則に副業禁止の条項があるのであれば、本業の会社とも交渉して、許可を得てから副業を行うようにしましょう。

副業の税金について徹底解説!【決定版】

3−3−2.給与所得者の事業申告拒否が有り得ます

開業届を提出するメリットの中で、本業の給与と損益通算することが可能というお話をしましたが、近年、給与所得者が偽の事業で大赤字を計上して、その赤字を給与所得と損益通算することで、給与から天引きされていた所得税をまるごと還付してもらおうとする悪質な手口で逮捕者も出ているようです。このようなこともあり、税務署によっては、給与所得者の事業申告をなかなか認めてくれない場合もあるようです。

税務署は毎年の確定申告でチェックしていますので、開業届を提出したとしても、収益が毎年上がっていないようでは、もしかすると事業所得としての申告は拒否される場合があるかもしれませんので、要注意です。

ちなみに、逆に収益がかなりあるのにもかかわらずに、雑所得で申請している場合には、事業所得に変更するように指導を受ける場合もあるようです。

3−3−3.専従者給与を払う場合は源泉徴収の義務が生じる

開業届を提出して、専従者給与を払う場合には、毎月しはる給料が8万7000円以上の場合には、所得税の源泉徴収の義務が生じることになります。源泉徴収についてはまた別記事にて書きたいと思いますが、これにはかなりの手間がかかりますので、覚悟しておく必要があります。

3−3−4.賃貸住宅で開業をしようとしている場合には大家さんに事前に報告しよう

賃貸住宅で開業する場合には、事前に大家さんの許可を取っておくことをおすすめします。青色申告では、使用した部屋の面積等に応じて家賃の一部を経費として計上しますが、確定申告時に提出する青色決算報告書に、大家さんの住所氏名を明記します。もし大家さんがこの家賃収入を申告していないなんてことがあった場合には、それがばれてしまい、ゴタゴタに巻き込まれる可能性があります。悪いのは大家さんの方ですが、そんなゴタゴタに巻き込まれるのは御免という方は事前に確認を入れておきましょう。

4.開業届を提出するかは副業の月収で判断しよう

ここまでまとめてきた内容から、副業の月収がどの程度の場合、開業届を提出したほうが良いかについて下記表にまとめましたので参考にしてください。

図1:副業での月収と開業届提出のオススメ度

副業での月収と開業届提出のオススメ度

月収1万円未満の場合には、確定申告が必要になる等手間がかかる割にメリットが少ないため、開業届を提出する必要はないでしょう。しかし月収1万円〜2万円または2万円〜5万円の場合には、年間所得が20万円を超え、確定申告がどちらにせよ必要になっているでしょうし、このくらい稼げるようになると月収5万円を超える日は近いと思いますので、開業届を提出するか検討し始めても良いでしょう。月収が5万円を超えてきたら開業届を提出したほうがデメリットよりもメリットのほうが確実に大きくなってくるでしょう。月収が5万円を超えたら開業届を提出するというのは一つの基準にして良いと思います。

5.まとめ

今回は副業を行っている人を対象として、開業届についていろいろまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?そもそも副業を行っている人は開業届をだすべきなのか、開業届を提出するタイミングはいつが良いのか、開業届を提出するメリット・でmリット・注意点は何なのか等について網羅的にまとめられたかなと思います。

ぜひ副業をされている方は、この記事を参考にしていただき、月収5万円を超えたあたりから節税のことも考えて、開業届の提出を検討してみてはいかがでしょうか?開業届の提出方法については、また別記事にて書きたいと思います。

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