「投資信託」。近頃さらに聞く機会が多くなってきたこの単語。皆さんちゃんと理解できていますか?知っているふりをしていませんか?知らないのに投資信託を購入したりしていませんか?もうそろそろ、ちゃんと投資信託について理解したほうが良い時期です。
実は投資信託についてちゃんと理解できている人は、まだかなり少数派です。一般社団法人 投資信託協会が2014年に調査したデータによると、投信信託を「よく知っている」人は全体の2.9%で、「大体は知っている」という人を含めても全体の24.5%という結果になっています。今はもっと理解している人が増えているかもしれませんが、まだまだ少ないのが現状でしょう。
一般向け首都圏・阪神圏調査結果【2014年(平成26年)調査結果の概要】
今後、消費税がさらに上がったり、年金の受給時期が延びたり、将来のお金の不安は高まるばかりです。そんな中で、「なにやら投資信託が良いらしい」「みんな投資信託を始めたらしい」程度のあいまいな情報で、焦って投資信託を開始する前に、ちゃんと投資信託について理解しましょう。この記事ではまず「投資信託とは何なのか?」ということをなるべく分かりやすくまとめてみました。みなさんのご参考になれば嬉しいです。ぜひ読んでみてください。
目次
- 1−1.投資信託は夢のある金融商品
- 1−2.投資信託は詰め合わせ商品
- 1−3.投資信託は詰め合わせ内容で性格が変わる
- 1−3−1.投資する地域が投資信託の性格を左右する
- 1−3−2.投資する商品が投資信託の性格を左右する
- 2−1.投資信託のメリット
- 2−1−1.少額から投資を始めることができる
- 2−1−2.まとまったお金がなくても、分散投資ができる
- 2−1−3.個人では投資しにくい地域・資産に投資できる
- 2−1−4.専門家が運用を代行してくれるので個人で投資するよりも手間がかからない
- 2−1−5.金融商品として透明性が高い
- 2−2.投資信託の注意点
- 2−2−1.手数料がかかる
- 2−2−2.元本が保証されている金融商品ではない
- 2−2−3.複雑な仕組みの商品もある
- 3−1.売る、作る、管理する3つの会社が存在する
- 3−2.販売会社、運用会社、信託銀行が破綻したらどうなる?
1.投資信託とは何なのか?
まずは、そもそも投資信託は何なのか?という概要についてを書いていきたいと思います。
1−1.投資信託は夢のある金融商品
この世には投資先が山のようにあります。日本の企業だけでなく、アメリカやイギリス、フランスなどの海外先進国の企業、そして現在急速に経済発展が進んでいる中国やインド、ブラジルなどの新興国の企業など数多くの投資先が存在します。
もし、その中から自分が気になる企業を数社ピックアップして個人的に投資しようとすると、数社だとしてもそれなりのまとまったお金がないと投資することができません。例えば下記10社が気になったとして、すべての企業の株を1株ずつ買おうとすると、合計で約28万円程度かかります(2015年4月18日時点)。実際には1株からでは買えない企業もあるので、これらの企業に投資しようとするとこれ以上のお金が必要になります。
- Apple(アップル:アメリカ)
- Google(グーグル:アメリカ)
- Microsoft(マイクロソフト:アメリカ)
- Nestle(ネスレ:スイス)
- TOYOTA(トヨタ自動車:日本)
- Alibaba Group Holdings(アリババ・グループ・ホールディングス:中国)
- Samsung Electronics(サムスン電子:韓国)
- Walt Disney(ウォルト・ディズニー:アメリカ)
- Tencent Holdings(テンセント・ホールディングス:中国)
- SoftBank(ソフトバンク:日本)
しかし、投資信託を使えば個人でも1万円程度の単位から、これらの企業も含んだ世界各国の様々な企業に分散投資をすることができるのです。今までは、ある 程度まとまった資金を持つ富裕層でなくてはできなかったことを、我々一般的な所得層も日本にいながらにして気軽にできるようになるのです。とても夢のある話だと思いませんか?
1−2.投資信託は詰め合わせ商品
投資信託とは、多くの投資家から少しずつお金を集めて、それを数百~数千億円単位にまとめ、プロが目利きをして銘柄を選択し、戦略を持って運用してくれる金融商品です。つまりプロがプロデュースした詰め合わせ商品のようなものですね。例えるならば、様々なレストランやシェフがプロデュースしたお弁当を想像してみましょう。各レストランは自分たちの得意分野を考慮してどのようなお弁当を作るかを考え(戦略を考え)、肉や野菜などの素材を様々な産地から仕入れます。そして、それらをお弁当というパッケージ商品にしてお客さんに販売します。こんなイメージを持ってもらえると分かりやすいと思います。
図1:投資信託の概要
1−3.投資信託は詰め合わせ内容で性格が変わる
投資信託は何を詰め合わせるかによって、性格が全く異なってきます。またお弁当を例にしますと、和食のお弁当もあれば、洋食や中華のお弁当もあるという感じです。投資信託の性格を左右する2つの要素についてここからは説明していきましょう。
1−3−1.投資する地域が投資信託の性格を左右する
まず投資信託の性格を決める一つの要素が、投資する地域になります。投資地域は、大きく分けると国内、海外、国内外の3つに分かれます。文字の通り、国内とは日本国内だけに投資をすることで、海外は海外だけに投資をすることで、国内外は日本国内と海外の両方に投資することです。
基本的には国内や海外でも先進国を対象とした投資は、新興国を対象とした投資よりも値動きの変動が比較的安定しているというような性格があります。海外や国内外に投資する投資信託の場合は、どのような国に投資するのかを確認しておくことが重要です。
1−3−2.投資する商品が投資信託の性格を左右する
そして、次に投資信託の性格を決める要素が、投資する商品になります。投資する商品は基本的に、株式、債券、不動産、その他、複合資産の5つとなります。複合資産というのは、「株式と債券と不動産」というようないくつかの資産をまとめて投資しているもののことを指します。
基本的には中身が債券中心の場合は、値動きは比較的穏やかですが、株式中心の場合は値動きが比較的激しい傾向にあります。よって、どのような商品がどのくらいの割合で組み込まれているのかをしっかり確認しておくことが重要です。
図2:投資信託の性格に影響を与える2つの要素
2.投資信託のメリットと注意点
ここからは投資信託のメリットと注意点を整理していきましょう。
2−1.投資信託のメリット
投資信託のメリットは下記の5点になります。
<投資信託のメリット>
- 少額から投資を始めることができる
- まとまったお金がなくても、分散投資ができる
- 個人では投資しにくい地域・資産に投資できる
- 専門家が運用を代行してくれるので個人で投資するよりも手間がかからない
- 金融商品として透明性が高い
2−1−1.少額から投資を始めることができる
前述の通り、株式投資や債券投資を個人でやろうとするとある程度まとまったお金が必要になります。しかし投資信託であれば、基本的には1万円から投資が可能です。投信積立の場合だと1000円/月から投資を始めることができます。
2−1−2.まとまったお金がなくても、分散投資ができる
リスクを抑えながら投資を行う基本的な投資の方法として、様々な商品に投資をすることでリスクを分散させる「分散投資」がありますが、個人投資家がこの分散投資をしようとすると多くのお金が必要になります。しかし、投資信託であれば多くの人からお金を集めて運用するので、少ないお金から分散投資をすることができます。
2−1−3.個人では投資しにくい地域・資産に投資できる
個人投資家には投資が困難な発展途上国の株式や債券などが存在しますが、それらを投資対象とした投資信託も多く存在します。
2−1−4.専門家が運用を代行してくれるので個人で投資するよりも手間がかからない
個人では投資に関する知識もそうですが、運用にかけられる時間もかなり限られています。その業務を各投資信託の運用方針にしたがって代わりにプロ(ファンドマネージャー)がやってくれるというのであれば、こんなに楽なことはありません。
2−1−5.金融商品として透明性が高い
毎日、取引価格である基準価額が公開されており、資産価値や値動きが分かりやすい金融商品と言えます。そして毎年の決算ごとに監査法人などによる監査も受けているため、透明性は高いと言えるでしょう。
2−2.投資信託の注意点
投資信託もメリットがあるだけではありません。当然、注意すべき点があります。そんな投資信託の主な注意点は下記3点になります。
<投資信託の注意点>
- 手数料がかかる
- 元本が保証されている金融商品ではない
- 複雑な仕組みの商品もある
2−2−1.手数料がかかる
投資信託は運用をプロに任せているため、その手数料がかかります。実際に投資信託はどのくらい儲かるかはわかりませんが、この手数料は確実に発生するマイナスリターンなので、各投資信託がどのくらいの手数料を取るものなのかは、しっかり確認した上で申し込みましょう。主な手数料は下記3つになります。
- 買付手数料:投資信託を購入する際に必要な手数料で、販売会社(証券会社や銀行)に支払うものです。この手数料がゼロのファンドもあり、それをノーロードと言います。
- 信託報酬:投信信託の運用にかかる手数料で、投資信託の資産残高に応じて年率何%というレートが各投資信託で決められており、毎日、純資産額から自動的に引かれていきます。自動で引かれていくので、見落としがちですが手数料の中で一番負担が大きくなります。
- 信託財産留保額:投資信託を信託期間の途中で換金する際の証券売却にかかるコストです。この信託財産保留額は、投資信託の資産に戻されるので、厳密に言うと金融機関に支払う手数料とは違う種類のものですが、差し引かれるものですので、考慮しておきましょう。
2−2−2.元本が保証されている金融商品ではない
投資信託は銀行預金とは異なり、運用実績によっては購入額より売却額が下回る可能性があります。また鋭い人であればお気づきかと思いますが、ノーロードではない場合、購入した時点で手数料がかかりますのでスタート時はマイナススタートになります。その点をしっかり考慮した上で、投資信託は購入していくことが大事です。
2−2−3.複雑な仕組みの商品もある
近年は特に、投資信託商品の複雑化が進んでいます。そして、この複雑化した商品を販売会社の営業マンは売りたがります。その理由は簡単で、複雑な商品は複雑なぶん手数料が高めに設定してあり、これら売った方が彼らの営業成績が上がるからです。販売会社が勧めるからと言って、理解できない投資信託を買うのは絶対にやめましょう。
3.投資信託の取引の仕組み
ここからは投資信託の取引に関わる関係者とその取引の仕組みを簡単に説明したいと思います。
3−1.売る、作る、管理する3つの会社が存在する
私たちは投資信託を販売会社から買います。これが「売る」会社ですね。販売会社とは、証券会社や銀行の窓口のほかにネット証券や銀行などが当たります。ここでは投資信託の購入・解約の手続きを行ったり、投資家の口座管理を行っています。
そして次に投資信託の商品を作って運用するのが運用会社です。これが「作る」会社ですね。運用するプロ(ファンドマネージャー)がいるのがこの運用会社で、投資信託で収益が出るかはこの運用会社にかかっています。ちなみに運用会社の中には運用するだけではなく、自分たちで直接投資家に投資信託を販売する会社もあります。
最後に投資信託の株式や債券を管理している会社が信託銀行になります。これが「管理する」会社ですね。信託銀行は運用会社の指示に従って、株式や債券の売買や管理を行っています。
図3:投資信託における投資家のお金の流れ
3−2.販売会社、運用会社、信託銀行が破綻したらどうなる?
万が一この投資信託を任せている各社が破綻してしまったらとうなるのでしょうか?販売会社、運用会社は実際に資産を管理していませんので、破綻しても問題ないことは分かるでしょう。ただし資産を管理している信託銀行が破綻したら、お金が戻ってこないのではないか?と思われる方がいるかと思いますが、大丈夫です。信託銀行は投資信託で預かった顧客の財産と信託銀行の財産を分けて管理することが法律で義務づけられています。よって3社のいずれも破綻しても大丈夫ということになります。
4.まとめ
投資信託は、少ない金額から世界各国の様々な企業に分散投資することができるとてもメリットのある金融商品です。ただし、複雑で手数料ばかりかかってしまい、知らないうちに資産が減っていってしまうような複雑な投資信託もあるので、気をつけなくてはなりません。
まず、我々は投資信託とはどういうものなのかを理解しなくてはいけません。そして、投資信託を選ぶ知識を身につけなくてはいけません(また別記事で投資信託の選び方についてはまとめます)。それができてやっと正常な投資活動ができるのです。この記事が、少しでも皆さんのお力になれれば幸いです。
また、そもそも投資とは?など投資を始める前の基礎知識を知りたい方は別記事「20代から投資で稼ぐための基本知識と7つの心得【決定版】」も合わせてご覧ください。
<参考文献>