高額療養費制度を徹底解説!医療費はここまで抑えられる

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民間の医療保険に入っている人は約7割ということは別記事「20代は保険に入るべき?保険の基礎知識【決定版】」にも書きましたが、民間の医療保険に入る前に確認しておかなくてはいけないことは「公的保険で十分ではないのか?」という点です。実は日本の公的な医療保険「健康保険」は以外と手厚い保障内容になっていて、民間の医療保険に入る必要がない人も多く存在するのが事実です。

今回はそんな健康保険の保障内容の中でも高額の医療費がかかった際に頼りになる「高額療養費制度」について徹底調査をし、まとめてみました。この制度は、加入している健康保険組合によっては、月の自己負担限度額が約2.5万円になってしまう方もいる!というような制度で、月にいくら医療費がかかっても自己負担限度額として設定された金額以上かからない。超えた分は国が支払ってくれるという制度です。

自分が健康保険に入っているのは知っていても、この制度の存在を知らない人は多いと思いますので、この機会にしっかり理解しましょう。この記事が皆さんの公的保険の理解促進の少しでも役に立てれば嬉しいです。

目次

1.高額療養費制度とは?

2.高額療養費制度の自己負担限度額

  • 2−1.自己負担限度額の計算方法
  • 2−2.標準報酬月額の計算方法

3.高額療養費制度を活用するための3つのポイント

  • 3−1.同月の医療費を家族とも合算して高額療養費制度を活用しよう
  • 3−2.限度額適用認定証があれば窓口で自己負担限度額のみの支払いでOK
  • 3−3.健康保険組合によっては自己負担額はさらに減る

4.高額療養費制度の申請手続き方法

  • 4−1.高額療養費制度の申請を事前にするか事後にするか
  • 4−2.高額療養費制度の申請に必要なもの
  • 4−3.高額療養費制度申請にあたっての注意点

5.まとめ

1.高額療養費制度とは?

高額療養費制度とは、そもそも何なのでしょうか?厚生労働省のホームページから引用すると下記の通りです。

高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)とは、公的医療保険における制度の一つで、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。

高額療養費では、年齢や所得に応じて、ご本人が支払う医療費の上限が定められており、またいくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みも設けられています。

引用:高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省

つまり、医療費が月間いくらかかっても、ある上限を超えた金額については負担してあげますよという制度です。図に表すと下図のような感じになります。下図は例として標準報酬月額(毎月の給料等の月収みたいなもの)が30万円で、1ヶ月の医療費が100万円かかった場合を表しています。実際にかかった医療費は100万円ですが、健康保険によって医療費は3割負担になりますので残り30万円。そしてさらに標準報酬月額30万円の場合は高額療養費制度により自己負担限度額を上回った分が払い戻されますので、自己負担限度額である8万7430円が自己負担額となります。100万円が8万7430円ですので、おおよそ90万円が健康保険により支払われることになります。(※ただし、入院中の食費や差額ベッド代、先進医療にかかる費用などは高額療養費の支給対象外になります。)

図1:1ヶ月に100万円医療費がかかった場合の自己負担額イメージ

1ヶ月に100万円医療費がかかった場合の自己負担額イメージ

このような制度があることは皆さん知ってましたか?怪我や病気で入院・手術するまでこんな公的保障があるなんて知らなかったという方がほとんどです。この機会にしっかり理解して、しっかり活用できるようにしておきましょう。

2.高額療養費制度の自己負担限度額

続いては、高額療養費制度の自己負担額の計算方法について書いていきたいと思います。

2−1.自己負担限度額の計算方法

高額療養費制度の自己負担限度額は、下図の通り年齢や年収によって変動します。まずは70歳未満の方の自己負担限度額についてですが、標準報酬月額によって「83万円以上」「53〜79万円」「28〜50万円」「26万円以下」「低所得者(被保険者が市区町村民税の非課税対象者等)」の5つの区分に分かれています。

月間の医療費が100万円かかった場合の具体的な自己負担限度額を各区分で計算してみましょう。すると、標準報酬月額が83万円以上の方の場合は25万4180円、標準報酬月額が53〜79万円」の方の場合は17万1820円、標準報酬月額が28〜50万円の方の場合は8万7430円、標準報酬月額が26万円以下の方の場合は5万7600円、市区町村民税の非課税者等の低所得者の方の場合は3万5400円となります。

図2:70歳未満の方の高額療養費制度の自己負担限度額

70歳未満の方の高額療養費制度の自己負担限度額

続いて、70歳以上75歳未満の方の自己負担限度額は下図のように「現役並み所得者(標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割)」「一般所得者」「低所得者」の3つの区分に分かれ、下記のような自己負担限度額になっています。

図3:70歳以上75歳未満の方の高額療養費制度の自己負担限度額

70歳以上75歳未満の方の高額療養費制度の自己負担限度額

続いて、75歳以上の場合は、75歳の誕生日から健康保険から後期高齢者医療制度に移行し、下図のような自己負担限度額になります。「現役並み所得者」「一般」「低所得者Ⅱ」「低所得者Ⅰ」の4つの区分に分かれ、下記のような自己負担限度額になっています。

図4:75歳以上の高額療養費制度の自己負担限度額(後期高齢者医療制度)

75歳以上の方の高額療養費制度の自己負担限度額

2−2.標準報酬月額の計算方法

標準報酬月額とは健康保険や労災保険、介護保険、厚生年金等の等級分けに使われる指標で、これによって今回の高額療養費制度の自己負担限度額等が決まってきます。まずは標準報酬月額を決めるにあたって、この報酬の中に何が含まれるのかをご説明したいと思います。主に下記のようなものが標準報酬月額のベースとなる報酬の中に含まれています。

<標準報酬月額の報酬に含まれるもの>

  • 基本給
  • 各種手当(残業手当、住宅手当、通勤手当など)
  • 年4回以上の賞与

※現物支給(社宅・寮や食事、自社製品等)も金額に換算して含む ※通勤手当は1ヶ月あたりの額に直す

そして、標準報酬月額を決めるのに使われる期間というのが決まっています。去年1年分ではなく、「毎年4月から6月の報酬」を参考にして標準報酬月額は決められています。決定した標準報酬月額はその年の9月から次の年の8月まで続きます。ただし、固定給が変わったり、最近3ヶ月の標準報酬月額が現在と2等級以上の差が出た場合には、4ヶ月目から標準報酬月額の見直しが行われます。(標準報酬月額によって健康保険や労災保険、介護保険は47等級、厚生年金は30等級に分かれています。)

それでは、標準報酬月額の計算方法についてですが、計算方法は簡単で4月〜6月の報酬の平均額を計算するだけです。(ちなみに、例えば、東京都に住んでいて、報酬月額が30万円だった場合、健康保険における等級は22等級に該当します。自分の等級を調べたい場合には全国健康保険協会のホームページに都道府県毎の保険料額表に等級分けも載っていますので、確認してみてください。)

3.高額療養費制度を活用するための3つのポイント

さて続いては、高額療養費制度をうまく活用するための3つのポイントをまとめたいと思います。3つのポイントは下記の通りです。一つずつ順番に説明していきましょう。

<高額療養費制度をうまく活用するための3つのポイント>

  1. 同月の医療費を家族とも合算して高額療養費制度を活用しよう
  2. 限度額適用認定証があれば窓口で自己負担限度額のみの支払いでOK
  3. 健康保険組合によっては自己負担額はさらに減る

3−1.同月の医療費を家族とも合算して高額療養費制度を活用しよう

高額療養費制度の対象となる自己負担額は、受信者別、医療機関別、入院・通院別で算出され、21000円以上のもの(70歳以上の方は受信者別、入院・通院別で全ての自己負担額)が対象となります。よって、下図のように同じ医療機関であれば、細かい外来医療費も合算できますし、同じ健康保険に加入する家族であれば、同じ月にかかった医療費を合算することができます。月をまたいで治療した場合、その医療費は合算できませんので、もし治療期間や入院日を調節できるのであれば、月をまたかずに治療することができると高額療養費制度をうまく活用することができます。

図5:高額療養費の合算例(同一世帯の複数人が複数医療機関等に受診した場合)

高額療養費の合算例(同一世帯の複数人が複数医療機関等に受診した場合)

3−2.限度額適用認定証があれば窓口で自己負担限度額のみの支払いでOK

医療費が高額になると事前に分かっている場合には、加入している健康保険組合に「限度額適用認定証」というものを事前に申請していおくことで、払い戻しを待つ必要はなく、医療機関の窓口で自己負担限度額のみの支払いで済ませることができます。提出する申請書や記入例については全国健康保険協会のホームページに掲載されていますので、そちらも合わせてご確認いただければと思います。詳細はご自身の加入する健康保険組合のホームページをご覧ください。

3−3.健康保険組合によっては自己負担額はさらに減る

加入する健康保険組合によっては、さらに付加給付として、「一部負担還元金」(被扶養者の場合は「家族療養費付加金」)というものを支給しています。これにより健康保険組合によっては、月額の自己負担額の上限が25000円になったりもします。詳細はご自身が加入している健康保険組合のホームページをご確認いただければと思います。

4.高額療養費制度の申請手続き方法

さて、ここからは高額療養費制度の申請手続き方法に関わる内容について書いていきたいと思います。

4−1.高額療養費制度の申請を事前にするか事後にするか

申請手続きの方法は大きく分けると下記の二つに分かれます。

<高額療養費制度の申請手続き方法>

  • 事後に高額療養費制度を申請する方法
  • 事前に高額療養費制度を申請する方法(限度額適用認定証)

事前に医療費が高額になるとわかっている場合には、「3−2.限度額適用認定証があれば窓口で自己負担限度額のみの支払いでOK」でも書いたように、事前に申請をしておくことで窓口での支払額が減り、相当楽になります。各々の詳細な手続き方法は、加入している健康保険組合によって多少変わりますので、各々の健康保険組合に問い合わせ、申請方法を確認の上申請を行うことになります。

4−2.高額療養費制度の申請に必要なもの

申請に必要なものは基本的には下記になります。

<申請に必要なもの>

  • 申請書類
  • 領収書
  • 保険証
  • 印鑑
  • 振込口座の分かるもの 等

4−3.高額療養費制度申請にあたっての注意点

高額療養費制度の申請にあたって、下記のような注意点もあるので、いざというときのために頭の片隅に置いておくと良いでしょう。

<高額療養費制度申請にあたっての注意点>

  • 払い戻しは診療月から3ヶ月以上かかる

自己負担限度額を超えた金額は申請すれば、すぐに払い戻しされるわけではなく、その審査等に時間がかかるため3ヶ月以上かかる場合が多いです。よって、貯蓄が十分にあり、いつ払い戻されようと問題がない人は良いですが、早く払い戻されないと医療費が払い続けられないという方などは、医療費の支払いに充てる資金として高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する「高額医療費貸付制度」もありますので、ご加入されている健康保険組合にご相談したほうが良いでしょう。

  • 高額療養費は2年以内であれば申請できる

高額療養費の権利は診察を受けた月の翌月初日から2年です。2年以内であれば遡って申請し、払い戻しが受けられます。

5.まとめ

今回は、多くの方が意外にもご存知ない「高額療養費制度」についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?この制度を今までご存知なかった人にはかなりの驚きの事実だと思います。加入されている健康保険組合によっては、月の自己負担額の上限は約2.5万円になってしまうのですから、医療保険なんていらないという意見が出てきても当然ですよね。

現在、約7割の世帯が医療保険に加入されていますが、現在医療保険に加入されている方はもう一度ご自身が加入されている保険の内容を見直してみることをお勧めします。その他の公的保障や保険の基礎知識については、別記事「20代は保険に入るべき?保険の基礎知識【決定版】」でいろいろ書いていますので、そちらも参考にしていただければと思います。

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